[技術・製品] なぜマルチコア光ファイバが重要なのか:次世代光ネットワーク・AIデータセンターを実現する光通信技術
2026.05.15

クラウドサービス、AI、動画配信などの急速な普及により、世界のデータトラフィックはこれまでにない速度で増加しています。これに伴い、通信インフラにはより大容量で効率的なネットワークの構築が求められています。しかし、従来の単一コア光ファイバでは、物理的・経済的な観点から伝送容量の拡張に限界が見えています。
こうした課題に対応する技術として、光通信業界で注目されているのが「マルチコア光ファイバ(Multicore fiber:MCF)」です。
マルチコア光ファイバは、空間分割多重(Space-Division Multiplexing)技術の一つであり、次世代の光通信ネットワークを支える基盤技術として研究・開発が進められています。

ファイバ1本あたりの伝送容量の進化(研究フェーズ)
Reference: https://www.rd.ntt/e/research/JN202007_5686.html
マルチコア光ファイバが注目される理由
これまで光通信の伝送容量は、波長分割多重(WDM)や高次変調方式、信号処理技術の進化によって拡大してきました。しかし近年では、光ファイバの非線形効果、消費電力の増加、システムコストの増大といった課題により、従来技術のみで伝送容量を拡張することが難しくなりつつあります。
マルチコア光ファイバは、1本のクラッド内に複数の独立したコアを配置し、空間方向に並列伝送を行う技術です。これにより、ファイバ本数を増やすことなく伝送容量を大幅に拡張でき、より高密度でスケーラブルなネットワーク構築を実現します。
![]() シングルコアファイバ |
![]() マルチコアファイバ |
さらに、マルチコア光ファイバには次のようなメリットがあります。
- ケーブルサイズおよび重量の削減
- 設置および保守コストの低減
- 伝送ビットあたりのエネルギー効率の向上
これらの特長により、マルチコア光ファイバは将来の光通信インフラを支える重要な技術として期待されています。
マルチコア光ファイバの主な用途
現在、マルチコア光ファイバはさまざまな分野で研究や実証実験が進められています。
●長距離ネットワーク・海底ケーブル
バックボーンネットワークや海底ケーブルでは、限られたスペースやケーブル本数の中で大容量通信を実現することが求められます。
マルチコア光ファイバは、1本のケーブル内で複数の光信号を並列伝送できるため、次世代の長距離通信インフラへの適用が期待されています。研究では、マルチコア構造によりペタビット級の伝送容量が実証されています。
●データセンターおよびAIインフラ
AIの普及に伴い、データセンター内の通信トラフィックは急速に増加しています。特にAIクラスタでは、サーバーやGPU間で大量のデータをやり取りするため、ネットワークにはより広帯域かつ低遅延の通信が求められています。
マルチコア光ファイバは、1本のファイバ内に複数のコアを持つ構造により、空間方向での並列伝送を可能にする技術です。これにより、高密度インターコネクトや、サーバー・スイッチ・アクセラレータ間を接続する短距離・広帯域通信を実現でき、次世代データセンターインフラへの応用が期待されています。
近年のデータセンターでは、Spine-Leafネットワーク構成の採用が進んでいます。Spine-Leaf構成は、クラウドサービスやAI処理の普及に伴い増加しているサーバー間通信(East-Westトラフィック)に対応するためのネットワーク構成であり、多数のスイッチ間接続を必要とすることから、データセンター内の光配線数が増加しやすい傾向があります。
マルチコア光ファイバは、複数のコアによる並列伝送によって、ケーブル本数を増やすことなく通信容量を拡張できます。この特長により、高密度配線が求められるSpine-Leafネットワークにおいて有効な技術と考えられています。
マルチコア光ファイバを支える接続技術
マルチコア光ファイバの実用化には、光ファイバだけでなく、それを支える周辺技術の発展が不可欠です。
製造・組立技術
- 高精度な成形および加工技術
- 高度な融着接続および組立プロセス
測定・評価技術
- コアごとの損失測定
- クロストーク(コア間干渉)の評価
- 信頼性および環境試験
●高精度コネクタ
マルチコア光ファイバでは、複数のコアを正確に位置合わせ(アライメント)することが極めて重要です。わずかな位置ずれでも、信号損失やコア間干渉の原因となる可能性があります。

三和テクノロジーズのMCFコネクタ技術
三和テクノロジーズは、マルチコア光ファイバに対応したMCF SCコネクタおよびMCF LCコネクタの開発を進めており、高精度なコアアライメントによる安定した低損失接続を実現します。
●FIFO(Fan-In Fan-0ut)デバイス
マルチコア光ファイバを既存の単一コアシステムに接続するためには、FIFO(Fan-In / Fan-Out)デバイスが必要になります。

三和テクノロジーズのMCF-FIFOデバイス技術
三和テクノロジーズは、既存ネットワークへのスムーズな統合を可能にするソリューションとして、MCF FIFOデバイス(Fan-outタイプ および プラガブルタイプ)の開発も進めています。これにより、マルチコア光ファイバを既存ネットワークへ柔軟に接続することが可能になります。
まとめ:マルチコア光ファイバが拓く次世代光ネットワーク
クラウドコンピューティング、AI、次世代通信の普及に伴い、ネットワークトラフィックは今後も増加し続けると予想されています。その中でマルチコア光ファイバは、光通信容量を拡張する新しいアプローチとして重要な役割を担うことが期待されています。
標準化やコスト、エコシステムの整備といった課題は残されていますが、ファイバメーカー、コネクタメーカー、システムベンダー、ネットワーク事業者の連携により、研究段階から実用インフラへの移行は着実に進んでいます。
三和テクノロジーズは、光接続技術の分野で培ってきた精密加工技術と接続技術を活かし、マルチコア光ファイバ時代に対応する高精度コネクティビティソリューションの開発を進めています。








