[技術・製品] 光コネクタの進化-黎明期から超高密度MDC・MMCへ
2026.03.12

光ファイバ通信は、世界中のデータ伝送の在り方を大きく変えてきました。その基盤を支える重要な部品の一つが、光コネクタです。
光コネクタは、光ファイバ同士を正確に接続し、安定した通信を実現するために欠かせないコンポーネントです。普段は装置の内部や配線設備の中に収まり、あまり目に触れることはありませんが、その性能は通信ネットワーク全体の信頼性や効率に大きく影響します。
40年以上にわたり、光コネクタは通信インフラからクラウドコンピューティング、ハイパースケールデータセンター、AIクラスター、超高速ネットワークといった需要の拡大に応えるため、小型化・高密度化・高性能化を遂げながら進化を続けてきました。
本稿では、光コネクタが初期の設計から最新の高密度実装ソリューションである MDC および MMC に至るまで、どのように進化してきたのかを振り返ります。
1. 始まり:大型・金属筐体光コネクタ(1980年代)
●FC(Fiber Connector)

NTTが開発したFCコネクタは、広く採用された最初期の光コネクタの一つとして知られています。ネジ締結式の金属ハウジングと直径2.50mmのフェルールを採用し、研究室環境や通信用途において安定した低損失接続を実現しました。堅牢な構造により高い安定性を備え、繰り返し接続しても再現性の高い接続が得られる点が特長です。一方で、サイズが大きく重量があることや、ネジ締結構造のため挿抜に時間がかかるといった課題もありました。
光ファイバネットワークの拡大に伴い、業界ではより扱いやすいコネクタが求められるようになりました。
2. 利便性の時代:バヨネット式金属筐体~プッシュプル式樹脂筐体光コネクタ(1980年代後半~1990年代)
●ST(Straight Tip)

STコネクタは米国AT&T社が開発した光コネクタで、バヨネット締結式を採用することでFCコネクタに比べて素早い挿抜を可能にしました。その扱いやすさから、企業ネットワークや初期のマルチモードシステムにおける標準的なコネクタとして広く普及しました。
●SC(Single Fiber Coupling)

SCコネクタはNTTによって開発された光コネクタで、1990年代を象徴する最も代表的な光コネクタの一つです。プッシュプル式ラッチ機構と角型ハウジングを採用し、容易な施工性と高い耐久性を実現しました。その優れた操作性と信頼性により通信事業者向けに広く採用され、FTTH(Fiber to the Home)やバックボーンシステムにおいて世界標準として確固たる地位を築きました。
しかし、データセンターの規模拡大に伴い、SCコネクタのサイズは物理的な制約となり始めました。
3. 小型化への転換:MUおよびLCコネクタ(1990年代~2000年代初頭)
●MU(Miniature Unit Coupling)

MUコネクタはNTTによって開発された小型光コネクタで、従来のSCコネクタの約1/2サイズに小型化された設計が特長です。直径1.25mmのフェルールを採用し、当時の通信設備において高密度実装を可能にするコネクタとして注目されました。コンパクトで扱いやすい構造により、主に通信事業者の設備や装置内部の接続用途で使用されました。
直径1.25mmフェルールを採用した光コネクタとして、MUコネクタは光コネクタの小型化の流れを切り拓いた存在といえます。
●LC(Lucent Connector)

LCコネクタの登場は、光コネクタの歴史における大きな転換点となりました。米国Lucent Technologies社が開発したLCコネクタは、MUと同じ直径1.25mmのフェルールを採用しながら、ラッチ機構による扱いやすさと光トランシーバとの高い親和性を備えた設計となっています。その結果、LCコネクタはSFP/SFP+ トランシーバ向けの主流コネクタとして急速に普及し、データセンター分野における標準的な光インターフェースとして広く使用されるようになりました。
しかし、クラウド、IoT、ストリーミングといった分野の需要が爆発的に拡大するにつれ、さらなる高密度化が求められるようになりました。
4. 並列光伝送・多心化の時代:MPOコネクタ/MTP®コネクタ(2000年代)
●MPO(Multi-fiber Push On)

●MTP®(Multi-fiber Termination Push-on)
MPOコネクタはNTTが開発したプッシュプル締結式の多心光コネクタです。またMTP®コネクタは、米国US Conec社が開発したMPO互換の高性能多心光コネクタです。
40G、100G、400G+、そして現在の800Gといった高速通信を支えるため、業界では MPOやMTP®といった多心光コネクタが採用されるようになりました。MPOは1つのフットプリントに 12心、24心、あるいは16心 の光ファイバを収容でき、並列光伝送や大規模な構造化配線を可能にしました。
しかし、AIクラスターやハイパースケールデータセンターの拡大に伴い、装置ポート数は急速に増加しています。特に、400G SR4.2 や将来の 800G DR8 などのデバイスレベルでは、送信(Tx)と受信(Rx)の2心で構成されるデュプレックス接続が多数必要となります。
このような用途では、MPOのような多心光コネクタが必ずしも最適とは限らず、より小型で高密度な接続ソリューションが求められるようになりました。
5. 最新世代:超小型デュプレックス光コネクタ(MDC)と多心光コネクタ(MMC)

AIクラスターやハイパースケールデータセンターの拡大に伴い、ネットワーク機器のポート密度は急速に高まっています。限られたラックスペースの中でより多くの光接続を実現するため、従来のLCやMPOよりもさらに高密度な光コネクタが求められるようになりました。
こうした背景のもと登場したのが、超小型光コネクタである MDC と MMC です。
●MDC(Miniature Duplex Connector)
MDC コネクタは、米国US Conec社が開発したVSFF(Very Small Form Factor)光コネクタで、データセンターにおける超高密度デュプレックス接続を実現するために設計されています。LCコネクタと同じ直径1.25mmフェルールを採用しながら、コネクタのフットプリントを大幅に縮小することで、LCの約3倍の実装密度を実現します。
主な特長:
- LCの約3倍の実装密度を実現
- 工具不要で挿抜可能なプッシュプルブーツ構造
- QSFP-DD、OSFPなどの光トランシーバに最適
- 400G、800Gおよび次世代光モジュールに対応

このような特長から、MDCコネクタはAIインフラやハイパースケールデータセンターにおける次世代デュプレックス接続として注目されており、次世代のスイッチやサーバ設計において採用が進み始めています。
●MMC(Miniature Multi-Row Connector)
MMCコネクタは、同じくUS Conec 社によって開発された超小型多心光コネクタで、並列光モジュール向けの高密度接続を実現するために設計されています。MMCは従来のMPOコネクタと同様に多心接続を可能にしながら、コネクタ構造を最適化することで MPOの約3倍の実装密度を実現します。これにより、AIクラスターやハイパースケールデータセンターで求められる膨大な光接続数にも対応できるようになります。
主な特長:
- 超小型多心光コネクタ
- MPOの約3倍の実装密度
- 次世代並列光モジュールに対応
- AIクラスターやハイパースケールデータセンター向け高密度配線

AI/機械学習(AI/ML)インフラの進展により、データセンター内の光接続数は今後も急速に増加すると考えられています。MMCコネクタは、こうした将来のネットワーク拡張に対応する高密度光接続ソリューションとして期待されています。
まとめ:FCからMDC・MMCへ — 小型化と高密度化の進化
光コネクタは、通信インフラやデータセンターの発展とともに進化してきました。その歴史は、信頼性の向上、操作性の改善、小型化、そして高密度化といった技術課題に応えながら発展してきた過程でもあります。
- FC ― 高い信頼性を備えた初期の標準コネクタ
- ST ― 安定した接続性と容易な挿抜を実現したコネクタ
- SC ― 施工性と操作性を向上させ、光通信の普及を支えたコネクタ
- MU ― Φ1.25mmフェルールを採用し、小型化の流れを切り拓いたコネクタ
- LC ― 小型化を普及させ、データセンターの標準となったコネクタ
- MPO ― プッシュプル締結式の多心接続を実現し、並列光通信を普及させたコネクタ
- MDC/MMC ― AIクラスターやハイパースケールデータセンターに対応する超小型コネクタ
このように光コネクタは、常により高密度で高性能、そして扱いやすい接続を目指して進化してきました。
1983年に現NTTグループの前身である日本電信電話公社へFCコネクタの供給を開始して以来、三和テクノロジーズは40年以上にわたり光通信インフラの発展を支えてきました。現在も、既存の通信ネットワークから次世代の高性能光コネクティビティまで、その進化の一端を担い続けています。






